その日そのホームセンターへ寄ったその男はとても苛ついていた。

明日は男にとってとても大きな勝負がある。勝負は麻雀である。
勝負の決戦の場所にしようと思っていた雀荘は予約が
いっぱいで借りれなかった。
協議の結果、男の自宅で勝負が行われる事が決まった。

男の家には麻雀牌はあるが麻雀用のマットがない。
数年前にゴムが劣化し更に緑の布の部分にカビが生えてしまい
男の母親が捨ててしまったのだ。
それ以来男は麻雀と無縁の生活を送っていた。

まあ麻雀のマットくらいホームセンターへ行けばあるさ。
家まではここから100キロ近くもあるし通り道には
ホームセンターも沢山あるはずだ。
男はそう気楽に考えてドライブ先から帰路についた。

一件目の店員:玩具売り場にあると思いますよ。
        確かに麻雀牌はあったがマットは見つからず。
二件目の店員:すみません、うちの店にはないですね。
三件目   :時間が遅くなったせいか閉店していた。

外はもうすっかり暗くなり空からは雪がチラホラと舞い落ちる。

勝負は明日だというのに三件とも空振り。
四件目は男の地元だ。確かお正月のチラシに麻雀マットが載ってたな・・・
と思いだし、やや気分が明るくなってお店へ到着。
大きなホームセンターや食料品店などが一つの建物に
入っているショッピングセンターである。
雪は本格的に降り始め辺りを白一色に染めている。

男はこの店で史上最強のDQN店員と戦う事になろうとは
想像すらしていないのだった。


早速男は店内を一週してみた。
しかし麻雀用のマットを見つける事が出来なかった。

店員を呼ぼうにももう閉店間際の店内である。
店員も昼間に比べてだいぶ帰ってしまってるらしい。

勝負は明日の夕方からであり、出直してもいいのだが
しかしここまで探したのだから、店においてあるものなら手に入れたい。
レジ行って聞いてみるかな・・・と顔を上げると向こうに店員が!

早速「あのー麻雀用のマットを探してるんですが。」と男

呼び止めた店員は、年の頃は22-3歳くらい、背は160センチ程度
割と小柄で角刈り風頭の店員であった。
顔はニキビだらけでちょっと幼さがまだ残ってる感じだ。
声はかなりの鼻声だ。風邪でもひいているのだろうか?
なんだか変な丁寧語でお客と話をする店員だった。
その鼻声と容姿と話し方で相手を苛つかせるのが得意技?らしい。
どう考えても女の子とは全く縁がなさそうなタイプの男だ。

「麻雀用マット・・・マット・・・インテリアコーナーですかね?」

と彼はそう答え、布団とか絨毯が並んでいるコーナーへ移動。
この店はそんな所に麻雀用のマットがおいてあるのか?
と男の頭の中に?マークが点滅する。しばらく探すものの、当然置いて無い。
この店員は麻雀マットそのものを見たことがないんだ・・・。

「ないですねぇ・・娯楽・・・レジャーコーナーかな?」

次に移動したのはバーべーキュー用品などのキャンプ用品などが
並んでいるコーナーである。
常識で考えても当然麻雀マットがそんな場所に置いてある訳がない。
この店員もしかして予想以上の馬鹿なんじゃ・・・・ため息が出そうになる。

それでも「お正月の広告には出てたんですが・・・。」と一応説明する。
店員もポケットから広告を取り出し眺めてみる。「ないですねぇ・・。」

「今の広告には載ってないかも。他に知ってる店員いないの?」
「いません。XXXXコーナーとXXXXコーナーとXXXXの担当は帰っちゃいましたからねぇ」
「本当にあなた以外に店員さんいないの?」
「いません!、へくしょーい!」

店員はやはり風邪を引いているらしい。
しかし、普段は物静かな男でも怒りメーターのリミッターが
限界突破ギリギリになる。

「いや、いないって事はないでしょう。」

これでも男もも大人だ。
こんな頭の悪い店員に口論で負けるわけにはいかない。
落ち着いて反論する。第一にレジには女の店員さんがいるのだ。
それにこれだけ広い店内である。
いくら閉店間際とはいえこいつしか店員がいない。
そんな店があるのか?この店の将来は大丈夫なのか?
と人ごとながら心配になる。
とその時、頭の良さそうなイケメン店員が2人の横を通りかかった。

いるやないかい!と突っ込みを入れそうになるが冷静に
イケメン店員に「麻雀マットを探しているのですが。」と説明。
イケメン店員は「麻雀マットですか?こちらです」
とほんのわずか数十秒で案内してくれる。

一応箱を開けて現物を確認。探していたマットだ。
”チャリララーン”とゼルダのファンファーレが頭に鳴り響く。

初めからこの店員に聞けばよかった・・。と激しく後悔する。
いけてない店員が「後は買うか買わないかはお客様の好きなように」
などど言う。どこまでも苛つく奴だ。

レジでお金払って外へ。雪は吹雪になっている。
さあ早く帰らなきゃ・・・と思ったその時
洋服の胸のあたりにベットリと何かが付いていた。
なんだこりゃ?と思いつつ手で触って取れるかやってみる。
殆どは取れたが跡が少し洋服に残った。

・・・・さっきのはDQN店員の鼻くそじゃない?
って気づいたのはそれから数分後の事であった。

うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ