夕方から今年一番の大型台風が僕らの地方を直撃する。
とのニュースが流れていた、ある秋の日の出来事である。


その爺様は初っ端からかなりエキサイトしていた。

「おいねぇちゃん!これが23000円の教科書か!!」

・・年の頃はおよそ70歳前後くらいであろうか・・
髪は短く会社の制服のような物を着ている。
きちんとネクタイを締め、小さな竹のカゴを手に持っている。
カゴの中には老眼鏡やタバコ筆記用具といったものが
入っているようであった。

順番に並んでいる人たちが驚いて振り返るほどの大声だった。
僕はといえば、その爺様の後ろの後ろに並んでいた。
爺様の後ろは中々可愛い女子大生風の女の子である。

窓口にはやけに大きな字で[60日講習][30日講習]と書かれている。
僕の方は60日の方に並ぶように!・・と最初の受付の人に厳命され
これから何が起こるのだろうか・・としょんぼり肩を落としていた。

やがて爺様の次にその女の子の順番がくる。しかし窓口の人は

「あ、ちょっと待ってくださいね。女の子同士の方がいいでしょう。」

と女の子を後回しにし、爺様の次に2300円支払いした僕に教科書と
番号札のようなものをくれた。必然的に爺様の次の番号は僕である。

要するにですね。僕はある日突如スピード違反で捕まってしまった
わけで60日の免停なんか嫌だから、せめて30日に短縮して貰うために
運転免許センターで開催される60日講習へ並んでいた訳ですね。

案の定というか予想通りというか、僕の隣の席は例の爺様であった。
そして僕と爺様の一日半に渡る激闘が始まった瞬間でもあった。



次回予告に一部爺様語録を載せよう。


 *日本シリーズで松阪に10万賭けとるんじゃ。
 *これで免停講習も6回目じゃ。
 *前回は免停中に有料のオービスに引っかかった。
 *その前は免許センターに車に乗ってきて帰り捕まった。
 
ざっと並べてみたがすごすぎる爺様である。続く。