爺様の話続きです。長い間おつきあいありがとうございました。
こんなに長くなるとは思いませんでした。とりあえず今回で最後です。



翌日は台風が行ってしまって雨はやんだものの曇り空が
広がるすっきしない天気だった。

僕は朝から無茶苦茶憂鬱だった。
今日の試験に落ちようモノなら30日短縮が40日とか50日になってしまう
からである。これだけは絶対に嫌だ。
それに何のために高い講習を受けたのか分からなくなってしまう。
なんとしても合格しなくては!と気持ちだけが焦る。

金沢駅から浅野川線、バスと乗り継いで免許センターへ。

「おはようございます。今日試験ですね。」と例の爺様に話しかける。
「ああ、あんなのは落ちる奴なんかおらんのじゃ。」

などと余裕の免許センターベテランの爺様。それに今日はとても上機嫌
のようである。それもそのはず・・爺様がなんだか酒臭い。

「朝から焼酎1合ほど飲んできたんじゃ。」
「昨日は台風の中運転して帰ったぞ。」

いいのか本当にそれ・・・見つかったらどうするんだ?
というか免停というものを理解しているのだろうか・・と疑問が湧く。
この爺様に怖いモノなんかないんだろうな・・と小心者の僕は思う。
爺様は今日も絶好調で講義の間にも昨日以上に突っ込みを入れる。

「試験の成績によって30日短縮が20日とかにならんのか?」

他にも色々突っ込んでたけどきりがないので省略。

「爺様は免許取り上げとかけっこうあるんですか?」と聞いてみる。
「あるある。何度もある。」「その度に自動車学校へ行くんですか?」
「そんな事はしない。免許センターで一発免許試験を受けるんじゃ。」
「あれって相当難しいって聞きますよ」
「なーにしっかり確認さえすれば、合格できる」
「そんなもんなんですか・・・。」

すっかり僕と爺様とはともだちんこ状態である。
僕が友達になりたかったのは、むこうの綺麗な女の子なのに何でこんな
爺様となどど思う・・・_| ̄|○

しかし実は僕は目撃してしまったのです。
その綺麗な子が鞄から飴のようなものを取り出して口に入れ出たゴミを
自分の足下にばらまいているのを・・


そして恐怖の試験開始。

用意始め!の合図の前にいきなり問題を開けてみる爺様。

「爺さん、ちょっとそれまずいって!」

おもわず声が出る。当然他の受講者からも注目をあびてしまう。
死ぬほど恥ずかしい思いをする。

試験は思ったほど難しくなくて、常識さえきちんと持っているようなら
普通に合格出来そうな問題が並んでいた。
しかし80点以上で合格なので油断は出来ない。しかしじっくり考えると
時間がなくなってしまいそうでちょっと焦る。やがて時間切れ。

後は所長の話があって一日半に及ぶ60日講習は全行程終了した。


受講生は無事に全員合格し、僕は無事にその後30日運転を我慢し免許
を無事に取り戻す事に成功したのでした。

爺様とはこれでさようならをしたけど、なかなか豪快な人だった。
名刺をちらりと見せて貰ったけどちょっとした会社の会長のようだった。

ちなみに例の綺麗な子は教官に最後に教官に残るように厳命さていたよ
うです。教官になにを言われたのかはわかりません。
教官もゴミを散らかしているのを目撃したのかもしれない。


帰り運転できないので能登鉄道で輪島まで帰ってきて途中とんでもない
目にあった話しと、免停60日になってしまったいきさつはまたの機会に。